ケララの女性たちの働く力と、これからの課題

ケララでは、今年も待望のモンスーンの季節が始まりました。
しかし、例年に比べると雨の量が少ないように感じるとトーマスさんのメールにありました。
エルニーニョのせいかもしれません。
もしこの傾向が続けば、農作物や日々の暮らしに大きな影響が出る可能性があるとされています。
天候の変化に生活を左右されやすい人々にとって、これからの時期は不安の大きい季節となるかもしれません。

今日ご紹介する写真は、懸命に働きながら家族を支えている女性たちへ、生活物資の支援を行った時の様子です。
この女性たちの多くは、家族のつながりが失われてしまったり、夫を亡くしたりと、それぞれに深い困難を経験してきたそうです。
それでも日々をあきらめず、家族を守るため、そして自分の暮らしを立て直すために、懸命に働き続けているとのことでした。










SEEDS-INDIAがある南インド・ケララ州は、インドの中でも教育水準が高く、福祉や地域づくりの面で大きな歩みを重ねてきた州として知られています。
識字率が高く、女性の教育も進んでおり、貧困削減や地域の自立に向けた取り組みも長く続けられてきました。

その一方で、女性たちの「働くこと」をめぐっては、いまも多くの課題があるとされています。
ちょうど、The India Forum に掲載された記事 “Kerala’s Women Workers: Gains, Gaps, and Growing Informalisation” に、ケララ州の女性労働者の現状について、前向きな変化と、見過ごせない問題の両方が紹介されていたので、まとめておきたいと思います。
記事は、ケララ州では女性の正規賃金・給与労働が増えている一方で、雇用の質が下がり、社会保障のない不安定な仕事も増えていると指摘しています。

インド全体で見ると、女性の就労は近年増えているものの、その多くは自営業や家族の仕事を手伝う形に偏っているとされます。
特に農村部では、家の仕事や小さな家業を無給で手伝う女性も少なくありません。
これは「女性が働くようになった」という明るい変化に見える一方で、実際には十分な収入や保障につながらない場合があるということを示しています。
生活のために働かざるを得ない、しかし安定した仕事にはなかなか届かない。そんな現実が背景にあるようです。

その点で、ケララ州には希望もあります。
記事によると、2023–24年の時点で、ケララ州の女性労働者の約半数が、正規賃金・給与労働に就いています。
これはインド全体の割合よりもかなり高い数字です。
教育を受けた女性たちが、学校、医療、福祉、事務、サービス業などで働く機会を得ていることは、ケララ州の大きな強みといえると思います。

また、ケララ州では女性の自営業についても、全国平均とは少し違った特徴があります。
インド全体では、自営業の中に「家族の仕事を無給で手伝う」女性が多く含まれていますが、ケララ州では、自分で小さな事業を営む女性や、収入につながる仕事に関わる女性の割合が比較的高いとされています。
地域の女性グループや起業支援の取り組みもあり、女性たちが自分の力で収入を得る道を広げようとする動きが見られます。

特に、ケララ州で広く知られている女性の自助グループ「クドゥンバシュリー」は、貧困削減や女性の自立支援に大きな役割を果たしてきました。
小さな商い、食品づくり、手工芸、地域サービスなど、女性たちが地域の中で仕事を生み出していく取り組みは、単なる収入支援にとどまらず、女性が自信を取り戻し、家庭や地域の中で声を持つことにもつながっています。

しかし、課題もあります。
記事が強く指摘しているのは、ケララ州では女性の働く機会が増えているにもかかわらず、その仕事が必ずしも安心できるものではないという点です。
正規賃金・給与労働といっても、日本でいう安定した正社員のような仕事ばかりではありません。
有給休暇がない、社会保障がない、書面での雇用契約がない。
そうした不安定な働き方が増えているとされています。

実際、ケララ州では、給与を得て働く女性のうち、有給休暇の対象外となる人や、社会保障を受けられない人の割合が近年増えています。
2025年のデータでは、女性の給与労働者のうち、有給休暇がない人は46%、社会保障がない人は59%、書面契約がない人は57%に上ったとされています。
仕事はあっても、病気になった時、出産や介護が必要になった時、年齢を重ねた時に、十分な支えがないまま働いている女性が多いということがわかります。

ケララ州は、インドの中では女性の賃金水準が高い地域でもあります。
教育水準の高さや労働組合の活動、最低賃金制度などが、その背景にあると考えられています。
しかし、男女の賃金差は今も残っています。
特に日雇いや臨時労働では、女性の賃金は男性よりかなり低く、安定した収入を得ることは簡単ではありません。

この記事は、教育を受け、働く意欲を持ち、地域を支える力を持った女性たちがたくさんいるということを伝えています。
しかし、その力が十分に生かされるためには、安心して働ける環境、社会保障、家族や地域からの理解、そして女性たちの小さな挑戦を支える仕組みが必要であるということを伝えています。

SEEDS-INDIAの支援も、そのような現実の中にあります。
この支援が、すぐに社会全体を変えるわけではないかもしれませんが、学びの機会、生活の安定、地域活動への参加、小さな仕事づくりへの後押しは、女性たちやその家族にとって大きな力になっています。

すでに多くの可能性を持ったケララの女性たちの力が、安心して育つための土台を、少しでも支えていくことができればと思います。


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