不安定なモンスーン

ケララでは、通常6月から9月頃までが南西モンスーンの季節で、現在は雨季も終盤を迎えています。
今年のケララでは、雨の少ない時期が長く続いたあとに突然激しい雨が降り、洪水や土砂崩れなどの被害が発生しました。
その後、雨はいったん落ち着き、洪水の水も引いています。

通常、ケララでは雨季になると病院も忙しい時期を迎えます。
大雨や洪水、土砂崩れによる怪我だけでなく、雨季には感染症が流行ったり体調を崩す人も増えるためです。
今年も8月初旬には各地で激しい雨となり、一時は心配な状況が続きましたが、現在のところ、食事の配給を行う公立病院もひとまず落ち着いているようです。

ただ、今年のモンスーン全体を振り返ってみると、例年とは少し違った雨の降り方が続いています。

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今年は、ケララでは6月1日にモンスーンが始まりました。
しかし、雨季が始まったからといって、その後ずっと雨が降り続いたわけではありませんでした。

インド全体でも6月中旬には、モンスーンの降水量が平年より約40%少ない時期がありました。
その後、雨の強まる時期が何度か訪れたことで差は縮まりましたが、8月初旬になってもインド全体では平年より約12%少ない状態でした。

ケララでも同じように、雨不足が続いていました。
6月1日から8月5日までの降水量は、平年より約22%少ない状態でした。

しかし、7月30日から8月5日までのわずか一週間だけを見ると、ケララでは平年の2倍を超える雨が降りました。
短期間に集中した激しい雨によって、洪水や土砂崩れが発生し、道路や家屋、農地などにも被害が出ました。
今年のケララでは、雨季全体では雨が少ないにもかかわらず、雨が降る時には非常に激しく降るという状況が起きています。

その後ですが、8月中旬になっても州全体の雨不足は23%ほど続いていました。
山岳地帯ではさらに深刻で、ワヤナードでは平年より約51%、イドゥッキでは約45%も雨が少ない時期があったようです。

山間部では雨が少なければ農業や水源に影響します。
一方で、一度に大量の雨が降れば、今度は土砂崩れの危険が一気に高まります。
今年の雨季は、雨が多いか、少ないかだけでは表すことのできない難しさがあります。

そして9月に入った現在、南西モンスーンは終盤を迎えています。
6月から9月初旬までにケララで降った雨は約1,370ミリ。
平年なら約1,770ミリ降る時期とされているので、現在も約23%不足しています。

さらに8月27日から9月2日の一週間だけを見ると、平年なら76.2ミリほど降るところ、今年は27.4ミリしか降っていないようで、平年を64%も下回る雨量です。
雨が少なくなったことで気温も上昇し、雨季が終わりに近づいているとはいえ、例年とは少し違う暑さを感じる地域もあるようです。

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こうした今年の不安定なモンスーンと関連して注目されているのが、「エルニーニョ」です。
赤道付近の太平洋の一部で海面水温が通常より高くなる現象とされていますが、世界各地の大気の流れを変化させるため、インドのモンスーンにも影響することがあると言われています。

一般的に、エルニーニョが発生する年は、インドのモンスーンが弱くなり、雨量が少なくなる傾向があるとされています。
今年も太平洋ではエルニーニョが急速に発達していて、今後かなり強い状態になる可能性があると予測されています。

ただし、エルニーニョが起きたからインドは必ず干ばつになるというわけではなく、1950年以降に確認された16回のエルニーニョのうち、インドのモンスーンが平年を下回ったのは7回だったというデータもあるようです。
インド洋の海水温や風の流れ、ヒマラヤやユーラシア大陸の積雪など、モンスーンにはさまざまな要因が関係しているためと言われます。

100年以上のインドの降雨記録を調べた研究では、エルニーニョの年には雨季全体の雨量が少なくなる一方で、一日に降る雨の量が極端に多くなることがあるとも報告されています。
特にその傾向が見られた地域のひとつが、ケララを含むインド南西海岸です。
今年のケララで実際に起きた、雨不足→短期間の豪雨と洪水→再び雨不足という流れは、この特徴ともよく似ています。

エルニーニョはまだまだ続くようなので心配ですが、こうした天候の変化が続く中でも、日々の支援活動は続いています。
今日掲載する写真は、SEEDS-INDIAが公立病院で行っている食事支援の様子です。

引き続き、病院を訪れている方々に、パンやバナナ、お水などを配っています。
以前のようにあたたかく栄養価の高い食事とは異なりますが、可能な限り続けていくことができるように、模索しながら行なっています。
すぐに口にすることのできるパンやバナナ、そして飲み水があることは、小さくても大切な支えになっています。










SEEDS-INDIAでは、大雨や洪水などの災害が発生した時には、被災した方々への食料や生活物資の配布など、緊急の支援を行っています。
しかし、支援が必要なのは災害の時だけではなく、病院での食事支援や、山岳地帯で暮らす方々への支援など、大きなニュースにはならない日にも、助けを必要としている方々がいます。

洪水の水が引いたからといって、人々の暮らしがすべて元通りになるわけではありません。
天候や社会の状況が変わっても、そこで暮らす人たちの日々は続いていきます。

今年の雨季はまだ完全に終わったわけではありませんが、今のところ病院も落ち着き、こうして日常の支援活動を続けることができています。

大きな災害が起きた時に支えること、そして何も起きていない時にも、必要な支援を続けていくこと。
これからもSEEDS-INDIAの活動を通して、ケララをはじめとする世界のさまざまな地域で起きていることに目を向け、学びながら、その活動を支えていければと思います。

日本でもこのところ各地で激しい雨が続き、短時間に記録的な雨となった地域もあります。
また、ネパールで起きている災害の様子にも胸が痛みます。

各地で続く災害の知らせに触れるたび、穏やかな日常が決して当たり前のものではないことを感じます。
日本、ケララ、ネパール、そして今も困難な状況にある地域の方々が、一日も早く安心できる日々を取り戻し、これからの季節を穏やかに過ごせることを願っています。

そして、どのような状況の中でも、支援を必要としている方々へ必要なものを届けていけるよう、これからもSEEDS-INDIAの活動を見守りながら、できる支援を続けていきたいと思います。
いつも活動を温かく見守り、支えてくださっている皆さま、本当にありがとうございます。